大人になってから『先天性筋性斜頸』の手術をした話

2022-02-16

私は生まれつき筋性斜頸でした。

近年では筋性斜頸は1歳半頃までに自然治癒しない場合は手術をするようですが、私が生まれた昭和の終わりごろには軽度な場合は手術をしないという選択をするケースも多かったようで、私も手術せずに大人になりました。

そんな私がなぜ大人になって手術をしたのか、その経緯と、手術の詳細、術後15年経った現在の状況などをお話しします。

 

筋性斜頸発覚〜手術決意まで

生後数ヶ月の頃、母が私の首の筋が硬いことに気が付き、かかりつけのクリニックで『先天性筋性斜頸』と診断されました。

クリニックの先生によると、「成長ともに自然に治る場合があるので様子を見ましょう」とのことで、教えてもらった首のマッサージを行っていたそうです。

その後、妹二人が生まれたり、父が交通事故にあったりと家庭内が大忙しだったため小学生くらいまで斜頸は放置されました。

いよいよ目に見えて首が傾いてきて猫背のようになってきたため、もう一度クリニックの先生に相談したところ、「もう年齢的に自然治癒はしないので手術になります」と言われました。しかし、すでに小学生になっていた私は手術にものすごく恐怖を抱き、「絶対にしない!」と手術拒否。そのまま放置されることとなりました。

 

しかし、手術をしない選択をしたことによる苦悩は多々ありました。

私の斜頸は割と軽度の方で、”ちょっと首が傾いていて、ちょっと首が前に出ていて、ちょっと猫背”という程度でしたが、思春期の女子には辛いものがありました。特に、写真がものすごく嫌いになりました。

例えばクラスで集合写真を撮るとか、卒業アルバムの個人写真を撮るとか、そういう時に首を真っ直ぐにすることができず、カメラマンさんに「首もうちょっと左にできる?右肩もう少し下げれる?」等、色々指示されるのが辛くて辛くて…。出来上がった写真を見ても一人だけ首が曲がっていて、「私はなんでこんな不良品として生まれてしまったのか」と心の底から落胆し、自信を失いました。

両親にも「姿勢が悪い」「もっと背筋を伸ばせ」「格好が悪い」と言われたり、30cm定規を背中と服の間に入れられたり(全く意味ない(笑)、自己否定をどんどん蓄えて育ちました。それでも手術への恐怖の方が大きかったので、手術したいとは思っていませんでした。

 

そんな私が手術を決意したのは22歳頃のこと。

高校生の頃から慢性的な肩こりがあったんですが、それがいよいよ悪化してきて、偏頭痛が起こるようになり、さらには群発頭痛(発作的に起こる激しい頭痛)にまで発展し、とても耐えられなくなりました。

整形外科や神経内科等を受診しMRI検査をしても異常なしと言われ痛み止めを処方されるだけ、整体やカイロプラクティックに通っても良くならず、ある時「これって斜頸が原因なんじゃ?」と思い色々と調べた結果、大人の斜頸手術はどこの病院も取り扱っていない中、大人でも手術してくれる病院を見つけることができたので手術を決意しました。

 

入院〜手術

その病院は千葉県市川市にある個人病院でした。(今は閉院しています。)そこの整形外科の先生が腕利きで、数多くの大人の斜頸の手術を成功させているという情報をネットで得たので早速電話しました。

私は名古屋に住んでいたので、千葉まで受診しに行き、手術内容に納得したらそのまま入院し手術しましょうという流れになり、母と共に病院へ行きました。先生は60〜70歳代くらいのベテラン男性医師でした。

入院時同じ病室にもう一人、私と同じ筋性斜頸の手術を同じ日にする女性の方がいらしたのでお話ししたところ、その方もネットで情報を得て来たとのこと。私よりも少し年上で、名古屋よりももっと遠いところから来られていました、「ちょっと怖いけどがんばろーね!」と励ましあいながらその日は就寝。

翌日手術が行われました。私は局所麻酔でしたので意識がある状態での手術がめちゃくちゃ怖かったです!!ずっと涙目で看護師さんに手を握ってもらっていました。手術内容は、首の前側にある『胸鎖乳突筋』を摘出するというもので、鎖骨の中心付近と耳の後ろの部分を3〜5cm程度切開しました。手術中も「大丈夫〜?痛くない?もうあと◯分で終わるからね〜」「なるべく傷が残らないように綺麗に縫合するね〜」と、とても優しく声がけしてくれる先生でした。

けれどもう二度とやりたくない!!(笑)
筋を切る音や感触がめちゃくちゃ怖かった!!耳の近くだから…!よく聞こえたよね…!!

 

手術は数時間で終わり、ギプスをつけてもらい、点滴を打ちながらベッドで休んでいたら麻酔が切れてきて、傷口付近に猛烈な熱さと痛みが襲ってきて痛み止めを追加してもらいました。首はほぼ動かせませんでしたが、トイレは点滴を持ち歩いて自力で行きました。

リハビリ〜術後の様子

手術の翌日か翌々日くらいからリハビリを開始しました。牽引機で首を引っ張るというものです。初めは看護師さんに使い方を教えてもらい、あとは自分一人でできるものです。

入院は1週間くらいだったと思います。退院後も地元の整形外科で牽引だけしてもらってねとのことでしたので、ギプスが取れるまでの間はリハビリに通いました。

手術痕はほとんど目立ちません。術後5年くらいは首に違和感を感じましたが徐々に薄らいでいき、15年経った今ではほとんど気になることはなくなりました。首もほぼ真っ直ぐになり、証明写真を撮る場面でもカメラマンさんに直されることはなくなりました。

手術前に感じていた肩こりは多少和らいだ程度ですが、頭痛は全くなくなりました。

 

手術の費用

手術入院費用は交通費を除いて15万円前後だったと思います。
県民共済に加入していたので、保険金が受け取れました。

 

まとめ

大人になってから斜頸の手術をするのはハードルが高いかもしれませんが、私は受けてよかったなと思いました。